東京地方裁判所 昭和45年(行ウ)126号 判決 1979年7月30日
東京都中央区湊一―六―三
原告
三富キク
東京都港区六本木五―一二―一八―一〇四
原告
三富桂子
東京都中野区東中野五―九―一
共栄荘
原告
三富繁信
右原告三名訴訟代理人弁護士
斎藤義雄
東京都千代田区霞が関一丁目一番一号
被告
国
右代表者法務大臣
古井喜実
東京都中央区新富町三―三
被告
京橋税務署長
嶋村甲子
右両被告指定代理人
磯部喜久男
同
前田成司
同
西尾房時
主文
原告三富繁信の訴えを却下する。
原告三富キク、同三富桂子の各請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実
(当事者の求めた判決)
第一請求の趣旨
一 被告国は、原告三富キクに対し一三三三万四七五九円及びこれに対する昭和四四年二月二四日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を、原告三富桂子に対し七一四万六四九一円及びこれに対する昭和四四年二月二四日から支払済に至るまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。
二 被告京橋税務署長が昭和四四年一月二四日付で原告三富キク及び原告三富桂子に対してなした昭和四一年一一月一日の相続開始に係る相続税についての更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。
三 被告京橋税務署長と原告三富繁信との間において、別紙一の4ないし6、10の預金及び株式が原告三富繁信に帰属するものであることを確認する。
四 訴訟費用は被告らの負担とする。
五 第一項につき仮執行の宣言
第二答弁
一 被告京橋税務署長の本案前の答弁
1 原告三富繁信の訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告三富繁信の負担とする。
二 被告らの本案に対する答弁
1 原告らの各請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
(当事者の主張)
第一請求原因
一 原告三富キク(以下「原告キク」という。)は亡三富繁信太郎(以下「繁太郎」という。)の妻であり、原告三富桂子(以下「原告桂子」という。)、原告三富繁信(以下「原告繁信」という。)はいずれも繁太郎の養子である。
昭和四一年一一月一日繁太郎が死亡し、同人の遺産(以下「本件遺産」という。)について相続が開始されたが、法定相続人のうち原告繁信が相続を放棄したので、原告キクと原告桂子が本件遺産を相続した。
二 原告キク、同桂子は、昭和四二年四月一九日被告京橋税務署長(以下「被告署長」という。)に対し相続税の申告(以下「本件当初申告」という。)をし、更に昭和四三年一二月一四日修正申告(以下「本件修正申告」という。)をしたが、被告署長は、昭和四四年一月二四日付で更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下これらを一括して「本件更正処分」という。)をした。原告キク、同桂子は、これに対し異議申立て及び審査請求をしたが、いずれも棄却された。その経緯は次表一、二のとおりである。
表一 原告キク
<省略>
表二 原告桂子
<省略>
三 しかしながら、本件遺産総額は四三五一万六〇八九円であり、これによると、正当な相続税額は、原告キクが五一七万四四四一円、原告桂子が三一一万八六〇九円である。原告キク、同桂子が前表一、二のように過大に申告したのは、後記のような明白かつ重大な錯誤によるものであり、また、原告桂子の本件修正申告は本人の意思に基づかないものでもあるから、右各申告のうち右正当税額を超える部分はいずれも無効である。また、本件更正処分も、原告キクが所有する財産を本件遺産と認定した違法がある。
1 本件当初申告の無効事由
原告キク、同桂子は、別紙一の1の借地権(以下「本件借地権」という。)全部を本件遺産に属するものとして申告したが、本件借地権は繁太郎と原告キクが共有していたものであり、このことは、賃貸借契約書(甲第一号証)の内容及び右借地上に原告キク所有の建物が存在していることからも明らかである。したがって、本件借地権のうち持分二分の一の権利は、原告キクに帰属し本件遺産を構成しないのであるから、本件借地権全部を本件遺産とした本件当初申告は明白に事実に相違するものである。こうした申告がなされたのは、同原告らを代理して本件相続税の申告事務を取り扱った前田幸蔵公認会計士事務所の職員が誤って右借地権全部を申告書に記載したことによるものであるが、原告キクはこうした記載内容をよく理解していなかつたのであり、また、原告桂子は本件相続税の申告を原告キクに一任していたため申告書を読んでおらず、原告キクの錯誤は原告桂子の錯誤ともいうべきである。したがって、原告キク、同桂子がした本件当初申告は、借地権の持分二分の一を本件遺産から除外しなかった部分について当然に無効である。
2 本件修正申告の無効事由
(一) 原告キク、同桂子は、別紙一の1の本件借地権のほか同2ないし14の財産も本件遺産に属するものとして修正申告をしているところ、本件借地権の申告が誤りであることは前記のとおりであるが、その余についても、2、3は原告桂子が、4ないし6、10は原告繁信が、7ないし9、11、12は原告キクがそれぞれ繁太郎から生前贈与を受け、以来各自がこれらを管理支配してきたものであり、また、13、14はもともと原告キクの固有財産であって、いずれも本件遺産に属しないものである。このことは、2ないし13の預金及び有価証券等がいずれも別紙一のとおり原告らの名義となっていること、2ないし9の預金証書等は、原告キクが繁太郎とは別に借り受けていた貸金庫に保管され、管理運用が繁太郎から独立していたこと、10の株式について、原告繁信がその配当金を所得税の申告において自己の所得として申告していること、11、12、の有価証券は、原告キクが繁太郎の生前に一〇万円と五万円の贈与を受け、同原告がこれを運用してこれまで大きくしたものであること、13の掛金は、原告キク自身が毎月一万三〇〇〇円宛積み立てたものであること、14の取扱料は、繁太郎の死亡後、原告キクが繁太郎の経営している会社の得意先を紹介してやつたことに対する被紹介者からの謝礼の意味を含めた香典であること、から明らかである。
以上のとおり、別紙一記載の財産が本件遺産に属しないことは明白であるが、繁太郎が本件で問題となっている預金等(後記の本件更正処分の対衆となった定期預金も含む。)を原告らに生前贈与したのは、繁太郎が病弱な体質であるうえ、前記のとおり原告桂子、同繁信が養子であり、原告キクも繁太郎の後妻であつて、その親子、夫婦関係が通常のそれと異なつていたため、自分の死後、遺産をめぐつて原告ら間に争いが起こるのを未然に防止し、相続が円滑に行われるように配慮したからにほかならない。また、原告繁信が相続を放棄したのは、別紙一の4ないし6、10の預金等を繁太郎からすでに贈与されていたからである。
(二) 別紙一の2ないし14の財産の帰属が右のとおりであるにもかかわらず、原告キク、同桂子がこれを本件遺産に含まれるものとして修正申告をしたのは、本件当初申告後、原告キクが税務当局から調査を受けた際、後に本件更正処分の対象となつた別紙二の定期預金等とともに別紙一の2ないし14の財産が未申告であることが発覚し、税務当局がこれらすべてを本件遺産に属するものとして課税の対象とする意向を示したため、前記前田公認会計士が、別紙一の2ないし14の財産について修正申告をすれば残りの別紙二の定期預金等は課税の対象から外してもらうように取り計らうので是非修正申告をするようにと原告キクに勧め、同原告も、修正申告の内容はよく分らなかったが、修正申告書を提出すれば少しでも税負担が軽くなると誤信し、いわれるままに修正申告書に押印したものである。このような次第であるから、原告キクのした本件修正申告は、明白かつ重大な錯誤によるものというべきであり、別紙一記載の財産を本件遺産とした部分は当然に無効である。
また、原告桂子は、修正申告書を提出することを知らず、同原告の修正申告書は原告キクが原告桂子より預つていた印鑑を使用して提出したものであり、原告桂子に関する本件修正申告は同原告の意思に基づかないものとして、事実に相違する限度で無効である。仮にそうでないとしても、原告キクの錯誤は原告桂子の錯誤でもあるので、原告キクの場合と同様、別紙一記載の財産を本件遺産に含ませた本件修正申告はその部分につき無効というべきである。
3 本件更正処分の違法事由
本件更正処分は、別紙二記載の定期預金及び未収利息(ただし、5は未収利息のみ)が本件遺産に属するものとしてなされたものであるが、これらは、いずれも名義が「三富きく」又は「三富キク」となつているとおり、原告キクが前記の事情から繁太郎より生前に贈与を受けていたものであり、本件遺産を構成しないものである。
よって、本件更正処分は違法である。
四 ところで、原告キク、同桂子は、昭和四四年二月二四日までに本件更正処分が定めた税額に相当する金員、すなわち原告キクは一八五〇万九二〇〇円(相続税一七九一万八一〇〇円+過少申告加算税五九万一一〇〇円)、原告桂子は一〇二六万五一〇〇円(相続税九九三万八七〇〇円+過少申告加算税三二万六四〇〇円)を被告国に納付済である。しかし、本件当初申告、本件修正申告及び本件更正処分には前記のような瑕疵があり、原告らが負担すべき正当な相続税は、原告キクが五一七万四四四一円、原告桂子が三一一万八六〇九円であるから、被告国は、その差額(原告キクについては一三三三万四七五九円、原告桂子については七一四万六四九一円)について不当利得しているものであって、これを返還すべき義務がある。
五 また、別紙一の4ないし6、10の財産は、前記のとおり原告繁信に帰属するものであるところ、被告署長は、右財産を本件遺産に属するものとして相続税の賦課及び徴収を行い、原告繁信の右財産に対する権利を否認しているため、原告繁信は右権利の実現を妨げられている。
六 よって、原告らは、請求の趣旨記載の裁判を求める。
第二被告暑長の本案前の主張
原告繁信の被告署長に対する請求は別紙一の4ないし6、10の財産が同原告に帰属するものであることの確認を求める一般の民事訴訟であるが、被告署長は、行政機関であって権利義務の帰属主体ではなく、右請求のような民事訴訟では当事者能力を有しない。
また、本件訴訟は共同訴訟であるが、原告繁信の請求が共同訴訟として許されるためには、行政事件訴訟法一七条一項により、原告繁信の請求が原告キク、同桂子の請求と関連請求になることが必要であるところ、本件では右関連請求にあたらないから、原告繁信の本訴請求はこの点からも不適法である。
第三請求原因に対する認否
一 請求原因一、二の事実は認める。
二 同三の前文の部分は争う。同1のうち、原告キク、同桂子が本件借地権全部を本件遺産に属するものとして申告したこと並びに本件当初申告書は同原告らを代理して前田公認会計士事務所が作成したことは認めるが、その余は争う。同2(一)のうち、原告キク、同桂子が別紙一記載の財産を本件遺産に属するものとして修正申告したこと並びに別紙一の2ないし13の預金及び有価証券等が原告ら名義となつていることは認めるが、その余は争う。同2(二)のうち、別紙一の2ないし14の財産が税務調査によって発覚したこと及び本件修正申告書を作成したのが前田公認会計士事務所であることは認めるが、その余は争う。同3のうち、本件更正処分が別紙二記載の定期預金及び未収利息を本件遺産に属するものとしたこと並びに右預金等の名義が「三富きく」又は「三富キク」となつていることは認めるが、その余は争う。
三 同四のうち、原告キク、同桂子が昭和四四年二月二四日までに本件更正処分の定めた税額を被告国に納付したことは認めるが、その余は争う。
四 同五のうち、被告署長が別紙一の4ないし6、10の財産を本件遺産に属するものとして相続税の賦課及び徴収を行ったことは認めるが、その余は争う。
第四被告らの主張
一 本件当初申告及び本件修正申告について
原告キク、同桂子は、同原告らが提出した本件当初申告書及び本件修正申告書の記載内容の一部に錯誤に基づく誤りがあり、当該部分は当然に無効であると主張するが、現行の申告納税制度のもとでは、申告書の記載内容の過誤の是正については、その錯誤が客観的に明白かつ重大であつて、税法の定めた方法以外にその是正を許さないならば、納税者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合でなければ、法定の方法によらないで記載内容の錯誤を主張することは許されないと解すべきである。更に、修正申告は、すでにした申告の内容を再検討したうえで行われるものであるから、納税者としては十分その内容を吟味してこれを行うべきことが予想される以上、修正申告書の記載内容は原則として争いえないものというべきである。
ところで、本件においては、本件の当初申告書及び修正申告書は、原告キク、同桂子から申告事務の委任を受けた前田公認会計士が原告キクから事情を聞いて作成、提出したもので、その記載内容についても、原告らは前田公認会計士より十分な説明を聞き、それを承認したうえで、これに押印しているのであるから、原告らが本件当初申告書及び本件修正申告書を提出するについて、右各申告を無効ならしめるような客観的に明白かつ重大な錯誤があつたものということはできないし、仮に、原告らが各申告書の内容を十分理解しないままに押印したものであつても、当該申告書は、代理人である前田公認会計士の作成に係るものであるから、その効果は原告らに帰属する関係にあり、原告ら独自の錯誤を主張することができないことは、いうまでもないところである。しかも、後記のとおり、別紙一記載の財産は本件遺産を構成するもので、本件当初申告及び本件修正申告は何ら事実と相違するものではないから、原告らの主張は失当である。
なお、本件修正申告書の原告桂子の印が原告キクによって押印されたものであるとしても、それは、原告桂子が本件相続に係る申告手続一切を原告キクに委せていた結果であり、原告桂子の本件修正申告が本人の意思に基づかない無効なもののということはできない。
二 本件更正処分について
1 本件更正処分において、被告署長が原告キク、同桂子の修正申告金額に加算した取得財産価額は、別紙二記載の定期預金合計二一五〇万円及びその未収利息合計六四万八〇七七円以上合計二二一四万八〇七七円である(別紙二の5の定期預金六〇万円は、本件修正申告において申告されているので、同預金の未収利息二万五一四二円のみを加算した)。
なお、株式会社歌舞伎座の株式に係る配当期待権二七〇〇円が本件遺産として修正申告されていたが、これは、原告キクの固有財産と認められたので、これについては減算した。
2 原告キクは、昭和四三年一二月一一日被告署長に対し、右定期預金は繁太郎より生前贈与を受けたものである旨を記載した陳情書を提出したが、被告署長が調査したところによれば、後記のとおり、右定期預金は、実質上繁太郎が所有し、管理、支配、運用していたもので、その名義(三富きく、三富キク)は単に形式的に利用されているにすぎないこと、原告キクが右陳情書において生前贈与を受けた時として主張している年はいずれも根拠がないこと、同原告は生前贈与を受けたと主張しながら、贈与税の申告をしていないこと、などが判明した。したがって、被告署長は、右定期預金を本件遺産と認定したのであり、本件更正処分は適法である。
三 別紙一、二記載の財産の帰属関係について
別紙一、二記載の財産が本件遺産に属することは、以下の事実から明らかである。
1 本件借地権(別紙一の1)
(一) 本件借地権については、本件当初申告に先立つ昭和四二年三月、本件相続人間で成立した遺産分割協議において、そのすべてが本件遺産に属することを各相続人が確認している。
(二) 原告らが援用する繁太郎と原告キクを連帯賃借人として作成されている昭和三七年五月一日付賃貸借契約書(甲第一号証)は、本訴においてはじめて提出されたものであるが、それには基本的事項である賃料の記載すらもなく、賃貸人寺田雄之助の代理人として右契約書に署名している寺田己之助の筆跡は、同人から繁太郎宛に発信された催告書のそれとは明らかに異なるものであり、はたして寺田己之助が真実原告キクと契約を締結したものかどうか疑わしい。
(三) 原告キクは、本訴提起直前に、賃貸人寺田雄之助と改めて賃貸借契約を締結しているが、その契約書の記載内容をみると、賃借人は右甲第一号証の契約当時から繁太郎だけとなっているだけでなく、原告キクは、右寺田雄之助との賃貸借契約締結の際、自己が連帯賃借人であることを否定するに十分な名義書替料の要否を寺田雄之助に尋ねている。
2 預金(別紙一の2ないし9及び別紙二)
(一) 定期預金の解約、設定、振替並びに名義、印鑑の使用状況
原告ら及び繁太郎名義の預金のうち三菱銀行桜橋支店外六行に預け入れられていた定期預金は、昭和三八年三月一日当時において、架空名義五一口、三富キク名義九口、三富きく名義二口、三富桂子名義五口、三富繁信名義三口、無記名一口合計七一口(金額合計三二一〇万〇四〇〇円)に分散されており、これらに使用されていた印鑑は七個であったた。しかし、右定期預金は、昭和三八年三月から四月までの間にかけて、三富キク、三富きく、三富桂子、三富繁信及び三富繁太郎の五つの名義に統一され、使用する印鑑も五個に統一された。
これらの印鑑、名義の使用状況、定期預金の解約、設定、振替等の状況を表によって示すと、次のとおりである。
(1) 定期預金に使用された印鑑の印影と同印影を収集した預金名…………別表一のとおり
(2) 本件更正処分の対象となった定期預金(別紙二)の動き…………別表二の1ないし13のとおり
(3) 本件修正申告の対象となった定期預金(別紙一の3、5、6、8)の動き…………別表三の1ないし4のとおり
(4) 本件当初申告の対象となった定期預金の動き…………別表四の1ないし8のとおり
(5) 別表一の印鑑により当初預入された別表二ないし四の預金名…………別表五のとおり
(6) 原告らが本件遺産として申告(修正申告を含む。)した普通預金名…………別表六のとおり
(7) 別表二ないし四に記載した定期預金の受取利息の預入先…………別表七のとおり
(8) 昭和三八年三月一日現在の定期預金の口数及び金額…………別表八のとおり
(二) 本件修正申告に係る預金(別紙一の2ないし9)
(1) 三菱銀行桜橋支店の三富桂子名義普通預金八万四九一四円(別紙一の2)
<一> 原告キクは、本件相続税の調査担当者に対し「これは繁太郎が契約していたもので、これについて桂子は何も知らない。」という趣旨の申立てをしている。
<二> 右普通預金に使用されている印鑑は別表一の<3>であるが、右印鑑は、三菱銀行桜橋支店の三富繁信名義普通預金の払戻請求書にいったん押印された跡があるほか、別表五の印影番号<3>欄記載のとおり三富桂子名義を含む一四口の定期預金にも使用されている。
<三> 右普通預金については、昭和二九年から昭和三一年にかけて、手形の預入を含む多額の入出金が繰り返されているが、昭和二九年当時わずか一六歳であった原告桂子が自らこのような多額の預金操作を行つていたとは考えられない。
(2) 三菱銀行桜橋支店の三富桂子名義定期預金二八〇万円(別紙一の3)
<一> 原告キクは、本件相続税の調査担当者に対し「繁太郎が死亡した当時、各銀行に繁信及び桂子名義で存在していた定期預金は、いずれも繁太郎が貯金し管理していたもので、繁信も桂子もこれらのことは全然知らなかつた。」という趣旨の申立てをしている。
<二> 右定期預金の預入経過は、別表三の1のとおり、まず<1>昭和三八年四月一日川島サト外五名の名義の定期預金を解約し、<2>その元本合計一六〇万円に同日同行の三富桂子名義普通預金から振替出金した四〇万円を加え、期間一年の二〇〇万円の定期預金とし、<3>それ以後、昭和三九年四月一日及び昭和四〇年四月一日の満期日にそれぞれ継続書替をなし、昭和四一年四月一日解約し、<4>右元本二〇〇万円と受取利息(預金利息から預金利子税を差し引いたもの。以下同じ。)九万九〇〇〇円に同日同行の三富桂子名義普通預金から振替出金した七〇万一〇〇〇円を加え、合計二八〇万円として新たに定期預金としたものである。
<三> 右川島サト外五名の名義の定期預金の受取人欄には、別表一の<4>及び<2>の印鑑がいつたん押印された後、それを訂正して別表一の<3>の印鑑が押印されているが、右<2><3><4>の印鑑は、別表五の印影番号<2><3><4>欄記載のとおり三富キク及び三富繁信名義を含む四四口の定期預金にも使用されている。
<四> 原告桂子は、昭和三九年にバーを開業したが、資金不足で繁太郎から資金援助を受けているにもかかわらず、右定期預金に手をつけていない。
(3) 三菱銀行桜橋支店の三富繁信名義普通預金二一万六九七一円(別紙一の4)
<一> 原告キクは、本件相続税の調査担当者に対し「これは繁太郎が管理していたもので、繁信は何も知らない。」と述べ、また、右普通預金から昭和四一年三月三〇日に引き出された七七万四二二一円は三菱銀行桜橋支店の三富繁信名義定期預金(別紙一の5)へ振替預入されているが、この点についても、原告キクは、「七七万四二二一円の引出しは繁太郎が行ったものである。」と述べている。
<二> 右普通預金に使用されている印鑑は別表一の<6>であるが、この預金から昭和四一年五月一六日に引き出された五万円の普通預金払戻請求書には、当初別表一の<3>の印鑑が使用された後、これが別表一の<6>の印鑑に訂正されているところ、右<3>の印鑑は、三菱銀行桜橋支店の三富桂子名義普通預金及び別表五の印影番号<3>欄記載のとおり三富桂子名義を含む一四口の定期預金にも使用され、また、<6>の印鑑も別表五の印影番号<6>欄記載のとおり三富桂子及び三富キク名義を含む六口の定期預金にも使用されている。
<三> 原告繁信の住所は、昭和三六年二月一六日に中央区湊町一丁目八番地から新宿区柏木一丁目一六〇番地へ、更に昭和三七年五月一一日に中野区小滝町二丁目二八番地へ移転しており、また、本件相続開始当時の同原告の勤務先は、新宿区中落合一丁目五番地の第二鳩タクシー株式会社であったが、一方、右普通預金の預入先たる三菱銀行桜橋支店は、原告繁信の住所地及び勤務先から遠く、繁太郎の住所地に至近の中央区西八丁堀二丁目一六番地に所在している。
(4) 三菱銀行桜橋支店の三富繁信名義定期預金四五〇万円(別紙一の5)
<一> 原告キクが本件相続税の調査担当者に対し「右定期預金は繁太郎が貯金管理していた。」旨を述べたことは、前記(2)<一>のとおりである。
<二> 右定期預金の預入経過は、まず、<1>昭和三四年三月三〇日積立期間三年の定期積立預金で始り、<2>昭和三七年三月三〇日積立期間満了によって、同日期間一年の三五〇万一〇〇〇円の定期預金に振り替えられ、次に<3>昭和三八年三月三〇日右定期預金の満期により解約し、その後は別表三の2のとおり、<4>元本三五〇万一〇〇〇円に同定期の受取利息一七万三三〇〇円の一部四万九〇〇〇円を加えて合計三五五万円とし、同日新たに期間一年の定期預金とするとともに、受取利息の残金一二万四三〇〇円を同日同行の繁太郎名義普通預金口座に入金し、<5>それ以後、右三五五万円の定期預金は、昭和三九年三月三〇日及び昭和四〇年三月三〇日の満期日に継続書替をなし、昭和四一年三月三〇日解約されているが、<6>その解約日に元本三五五万円と受取利息一七万五七七九円に同日同行の三富繁信名義の普通預金から振替出金した七七万四二二一円を加え、合計四五〇万円として新たに定期預金したものである。
<三> 右定期預金は、三菱銀行桜橋支店の三富キク名義定期預金六〇〇万円(別紙二の3)と同一年月日に継続されているが、この二つの定期預金証書の元利受取人欄の筆跡は、いずれも同一人のものと認められる。
<四> 右三富繁信名義定期預金に使用されている印鑑は別表一の<6>であるが、これは、別表五の印影番号<6>欄記載のとおり三富桂子及び三富キク名義の定期預金にも使用されている。
(5) 三和銀行八丁堀支店の三富繁信名義定期預金一五〇万円(別紙一の6)
<一> 原告キクが本件相続税の調査担当者に対し「右定期預金は繁太郎が貯金管理していた。」旨を述べたことは、前記2<一>のとおりである。
<二> 右定期預金は、別表三の3のとおり昭和三八年三月二五日当時三富桂子及び三富キク名義を含む五口の定期預金に分散されていたものである。
<三> 右定期預金に係る昭和三八年三月二五日の受取利息八万二五九〇円、昭和三九年三月二五日の受取利息七万八三七五円及び昭和四一年三月二五日の受取利息七万四三三〇円は、いずれも三和銀行八丁堀支店の三富繁太郎名義普通預金に預入されている。
<四> 右定期預金に使用されている印鑑は別表一の<6>であるが、これは、別表五の印影番号<6>欄記載のとおり三富桂子及び三富キク名義の定期預金にも使用されている。
(6) 三菱銀行桜橋支店の三富キク名義普通預金三〇九万〇八六一円(別紙一の7)
<一> 原告キクは、本件相続税の調査担当者に対し「三菱銀行のキク名義の普通預金は繁太郎が管理していた。」と述べている。
<二> 右普通預金から昭和四一年六月一七日に引き出された四〇万円は、同日三菱銀行桜橋支店の三富繁太郎名義当座預金に振替預入されている。
<三> 右普通預金から昭和三九年三月三〇日に引き出された二〇〇万円は原告桂子のバー開業資金として使用されているが、右二〇〇万円につき、原告キクは、本件相続税の調査担当者に対し「繁太郎からもらってやつた。」と述べている。
<四> 右普通預金に借用されている印鑑は別表一の<2>であるが、これは、別表五の印影番号<2>欄記載のとおり三富桂子及び三富繁信名義を含む一九口の定期預金にも使用されている。
(7) 三和銀行八丁堀支店の三富キク名義定期預金六〇万円(別紙一の8)
<一> 右定期預金は、別表三の4のとおり昭和三九年一二月二六日三和銀行八丁堀支店の三富繁太郎名義普通預金からの引出金額六〇万円により設定されたものである。
<二> 仮に、右設定の日に繁太郎から原告キクに贈与されたものであるとしても、当該贈与の日は本件相続の開始前三年以内であるから、相続税法一九条により右定期預金は本件相続税の課税価格に加算されるべきである。
(8) 東海銀行京橋支店の三富きく名義普通預金一七万五〇二五円(別紙一の9)
右普通預金に使用されている印鑑は別表一の<7>であるが、これは、別表五の印影番号<7>欄記載のとおり三富キク及び川島キク名義定期預金にも使用されており、更に、右三富キク及び川島キク名義定期預金証書裏面には、別表一の<2>及び<4>の印鑑がいったん押印された跡がある。
以上の事実、すなわち原告キクの本件相続税の調査担当者に対する供述及び印鑑、名義の使用状況、受取利息の預入先等からすると、本件修正申告に係る預金(別紙一の2ないし9)は繁太郎が所有、管理していたものというべきである。
(三) 本件更正処分の対象となった定期預金(別紙二の1ないし13)
本件更正処分の対象となった定期預金の解約、設定、振替の経緯及び印鑑、名義の使用状況並びに受取利息の預入先等は、別表一、二、五、七のとおりであるが、これらの事実、特に各定期預金の名義及び印鑑が前記(二)の本件修正申告の対象となった各預金とともに混然となって使用されていること、受取利息の大部分は、本件遺産に属すると認められる前記(二)(6)の三富キク名義普通預金に預入されているほか、別紙二の6の定期預金の受取利息のうち昭和三八年四月一日の二八万一二六五円は、第一銀行深川支店の三富繁太郎名義普通預金に預入されていること等からすると、本件更正処分の対象となった各定期預金も、その実質は繁太郎の所有に係るもので、本件遺産に属するものと判断される。
3 本件修正申告に係る三富繁信名義の三菱銀行株式二万株一七二万円(別紙一の10)
(一) 原告キクは、本件相続税の調査担当者に対し「右株券は繁太郎が管理し、これに対する配当も繁太郎が受け取つていた。」と述べており、また実際にも、右株式に対する昭和四一年五月及び同年一一月の配当金の受取場所は、実質的な所有者が繁太郎と認められる前記2(二)(3)の三菱銀行桜橋支店の三富繁信名義普通預金と指定されている。
(二) 右株式については、昭和三九年二月一日付の株主割当(一対一)により増資が行われているが、右増資払込金五〇万円(一万株分)は、繁太郎名義の三菱銀行株式についての増資払込金五〇万円とともに合計一〇〇万円として、三菱銀行桜橋支店の繁太郎名義普通預金から昭和三九年一月八日同銀行の別段預金(増資払込口)へ振替入金されている。
(三) 右事実からすると、右株式の実質的所有者は、繁太郎であると認められる。
4 本件修正申告に係る有価証券 山一証券の三富キク名義ワリコー六〇〇口五九万七〇三七円及び同ユニット五五口五七万七五〇〇円合計一一七万四五三七円(別紙一の11、12)
原告キクの昭和三九年分所得税の確定申告書によれば、同原告は不動産所得二七万二五四五円以外には所得がなく、その所得も昭和三九年八月二〇日に自己名義の建物を他に賃貸することによって得るようになつた所得であり、同日以前はほとんど無所得であったと推測される。したがって、右有価証券が、原告ら主張のように原告キク自身がわずか一五万円(一〇万円と五万円)を運用して一一七万四五三七円まで増加させたものとは到底考えられず、右有価証券の実質的所有者は繁太郎であると認められる。
5 本件修正申告に係る第百生命の三富キク名義掛金四八万六〇〇〇円(別紙一の13)
原告キクは、本件相続税の調査担当者に対し「右掛金は、繁太郎の収入から毎月一万三〇〇〇円を積み立てたのち、これを昭和四一年一二月三〇日に解約して、その受取金額のうち四〇万円を東海銀行京橋支店の三富きく名義普通預金へ預入した。」という趣旨の申立てをしている。
したがって、右掛金は原告キクのものとは認められず、本件遺産に属するものである。
6 本件修正申告に係る取扱料一〇万円(別紙一の14)
右取扱料は、産業振興株式会社が昭和四一年一一月三〇日繁太郎に対し屑鉄の取扱料として支払うべき一〇万円が本件相続開始当時において未収金となっていたものである。
したがって、これが本件遺産に属することは当然である。
第五被告らの主張に対する原告らの反論
一 被告らの主張二1の事実、同2のうち原告キクがその主張のような陳情書を提出したこと、及び贈与税の申告をしていないこと並びに同三2(一)の事実は認める。
二 原告らが昭和三八年三月一日当時別紙一、二記載の各預金を多くの架空名義又は他人名義に分散していたのは、預金先銀行の担当者からいわゆる小額預金の非課税制度を利用するように勧められ、その結果、右のように種々の名義を使用して預金を小口に分散したにずぎないのであり、その後においては、名義を分散前と同様それぞれ贈与を受けた原告ら名義に統一しているのであって、一時的に名義が分散しているからといって、原告らの主張を否定する根拠とはならない。また、原告ら名義の預金の利息が三富繁太郎名義の預金に預入されている例が一部見うけられるが、これは、繁太郎と原告らとが夫婦、親子の関係にあつたため相互に融通をしていたものであり、何ら異とするに足りないものである。
(証拠)
第一原告ら
一 甲第一ないし第三号証、第四号証の一、二、第五ないし第九号証、第一一号証、第一二号証の一ないし四、第一三、第一四号証(第一〇号証は欠番)
二 証人鈴木覚、同前田幸蔵、同寺田雄之助の各証言及び原告三富キク、同三富桂子の各本人尋問の結果
三 乙第一号証の一、二、第二号証、第四ないし第一三号証、第一四ないし第一九号証の各一、二、第二〇号証、第二一、第二二号証の各一、二、第二三ないし第二六号証、第二七、第二八号証の各一、二、第三〇号証の一、二、第三一ないし第三四号証、第三八、第三九号証、第四〇号証の一、二、第四六、第四八号証、第五一ないし第五三号証、第五五、第五六号証、第五八ないし第八〇号証、第八一号証の二の成立並びに第三五ないし第三七号証、第四一ないし第四五号証、第四七、第四九、第五〇、第五四、第五七号証、第八一号証の三の原本の存在と成立は認めるが、その余の乙号各証の成立は不知。
第二被告ら
一 乙第一号証の一、二、第二ないし第一三号証、第一四ないし第一九号証の各一、二、第二〇号証、第二一、第二二号証の各一、二、第二三ないし第二六号証、第二七ないし第三〇号証の各一、二、第三一ないし第三九号証、第四〇号証の一、二、第四一ないし第八〇号証、第八一号証の一ないし三
二 証人田畑岩三郎、同田中冨士夫、同前田幸蔵、同西尾房時の各証言
三 甲第二、第三、第一一号証、第一二号証の一の成立は認めるが、その余の甲号各証の成立は不知。
理由
(原告繁信の本件訴えに対する本案前の判断)
原告繁信の本件訴えは、被告署長に対して別紙一の4ないし6、10の預金及び株式が同原告に帰属することの確認を求めるものであるが、被告署長は行政機関であって一般私法上の権利義務の主体とはなりえないものであるから、右訴えは、当事者能力を有しないものに対する不適法な訴えであり、却下を免れない。
(原告キク、同桂子の各請求に対する判断)
一 請求原因一、二の事実は当事者間に争いがない。
二 本件当初申告の無効について
1 原告キク、同桂子が本件借地権全部を本件遺産に属するものとして申告したこと並びに本件当初申告書が前田公認会計事務所の作成に係るものであることは、当事者間に争いがないところ、原告らは、本件借地権の持分二分の一は原告キクに帰属するものであり、この部分に関する本件当初申告は原告らの錯誤に基づくもので無効であると主張する。
2 ところで、原告らが右借地権に関する賃貸借契約書であるとして提出した甲第一号証の昭和三七年五月一日付賃貸借契約書には、連帯賃借人として「三富繁太郎」「三富キク」の名前が連記され、その名下にそれぞれ押印のあることが認められ、また、成立に争いのない甲第二号証によれば、本件借地上には、同年八月二七日原告キク所有名義の建物が建築されたことが認められる。そして、原告キク、同桂子は、その各本人尋問において「原告キク所有の建物を建てることになったので、同原告も繁太郎とともに賃借人となった。」旨を供述している。
しかし、成立に争いのない乙第三一、第三二号証、第八一号証の二、証人西尾房時の証言により真正に成立したと認められる同号証の一及び証人寺田雄之助の証言によれば、本件借地権に係る宅地は寺田雄之助の所有であるが、以前から繁太郎が単独でこれを賃借していたこと、甲第一号証が作成された昭和三七年五月一日当時、右寺田雄之助は同土地の管理を同人の父寺田巳之助に一切委ねており、巳之助が土地を新しく他の人に賃貸するときはその旨を雄之助に報告するのを常としていたが、雄之助は、原告キクが新たに賃借人となったという報告は受けておらず、そのことについては全く知らなかったこと、繁太郎の死亡後である昭和四五年二月一五日雄之助は、原告キクと新たに賃貸借契約を締結しているが、その契約書の前文には「なお本契約は当初昭和参拾七年五月壱日前賃借人三富繁太郎と締結したるも同氏死亡のため本日相続人三富キク氏がこれを承継したものである。」との記載があり、しかも、その契約締結の際、原告キクは雄之助に対し名義書替料の要否を尋ねていることが認められるほか、成立に争いのない乙第一号証の一、二、前掲乙第三一、第三二号証並びに証人田畑岩三郎、同前田幸蔵及び同田中冨士夫の各証言によれば、原告らの遺産分割協議書には、本件借地権が何の留保もなく本件遺産として掲げられていること、原告キクは、本件申告事務を委任した前田公認会計士事務所の職員に対し、本件借地権が繁太郎と原告キクとが共有するものであると説明したことはないこと、本件申告後、本件相続税について調査を担当した田中冨士夫が、本件借地権の坪数等を確認するため原告キクに契約書等の資料の提出を求めたところ、原告キクは、契約書は存在しないと答え、代わりに寺田巳之助から昭和三六年に繁太郎宛になされた更新拒絶の通知書と当時の建物の見取図を提出したが、その際、本件借地権が繁太郎との共有財産であるといったことは一切述べなかったことが認められ、右認定に反する原告キク本人尋問の結果は措信しない。
右事実によると、甲第一号証に原告キクが連帯賃借人として名を連ねているのは、本件借地上に原告キク名義の建物を新たに建築する予定であつたことから、単に形式上原告キクの名前を連記したにすぎず、実際には従前と同様に繁太郎のみが賃借人であつたのではないかということも十分考えられるのであり、繁太郎と原告キクの二人が賃借人であったとする前記原告キク、同桂子の各本人尋問の結果はにわかに採用しがたいものがある。
3 そうであるとすれば、本件借地権が繁太郎と原告キクの共有であったとの事実は、本件全証拠によってもこれを認めるに足りないというほかないのであるから、本件借地権の持分二分の一の権利が原告キクのものであることを前提に本件当初申告の無効をいう原告らの主張は、失当である。
三 本件修正申告の無効について
1 原告キク、同桂子の本件修正申告書が前田公認会計士事務所の作成したものであり、同申告書に別紙一の1ないし14の財産が本件遺産に属するものとして掲記されていたことは、当事者間に争いがない。
2 原告桂子は、同原告の本件修正申告は本人の意思に基づかないものであると主張するが、成立に争いのない乙第二号証、証人前田幸蔵の証言により真正に成立したと認められる乙第三号証、証人田畑岩三郎、同前田幸蔵の各証言及び原告キク、同桂子の各本人尋問の結果によれば、原告桂子は、自分の本件相続税の申告について一切を原告キクに委ねていたので、原告キクが前田公認会計士事務所に依頼して原告桂子の本件修正申告書を作成してもらい、その内容につき説明を受けたうえで原告桂子名下の印を原告キクが押印したものであることが認められるのであるから、原告桂子が本件修正申告をすることを知らなかったとしても、それが同原告の意思に基づかないものということはできない。
3 そこで、本件修正申告の対象となった別紙一記載の財産が本件遺産を構成しないものであるかどうかについて判断する。
(一) 本件借地権(別紙一の1)
これについては、前記のとおりであり、持分二分の一を原告キクが有することを認めるに足りる証拠はない。
(二) 預金(別紙一の2ないし9)
(1) 右預金は、いずれも原告ら名義となっているものであるが、そのほかに本件更正処分の対象となった原告キク名義の別紙二の定期預金、更には当初から本件遺産として申告された三富繁太郎名義の預金もあるので、これら全部について、その名義、印鑑の使用状況、解約、設定、振替の動き、受取利息の預入先等を検討すると、次のとおりである。
原告ら及び繁太郎名義の預金のうち定期預金が、昭和三八年三月一日当時において架空名義五一口、三富キク名義九口、三富きく名義二口、三富桂子名義五口、三富繁信名義三口、無記名一口合計七一口に分れ、これらに使用されていた印鑑が七個であつたこと、しかし、右定期預金の名義は、昭和三八年三月から四月にかけて、三富キク、三富きく、三富桂子、三富繁信及び三富繁太郎の五つに統一され、使用されている印鑑も五個に統一されたこと、そして、これらの印鑑、名義の使用状況、定期預金の解約、設定、振替の動き、受取利息の預入先等が別表一ないし八のとおりであることは、当事者間に争いがない。
右事実によると、印鑑、名義の使用が混然としており、極めて複雑である。すなわち、まず印鑑については、定期預金に使用された七個の印鑑の印影は別表一のとおりであり、その印鑑により当初預入された定期預金とその名義は別表五のとおりであるが、これによると、名義統一後三富キク又は三富きく名義の定期預金に使用されている別表一の<2>の印鑑は、統一前においては三富桂子、三富繁信名義の定期預金にも使用されていること、名義統一後は三富桂子名義の定期預金に使用されている別表一の<3>の印鑑は、統一前においては三富きく名義の定期預金にも使用されていること、名義統一後三富繁信名義の定期預金に使用されている別表一の<6>の印鑑は、統一前においては三富キク、三富桂子名義の定期預金にも使用されていることが明らかである。次に、名義については、名義統一前において使用された名義は種々雑多であるけれども、その苗字を整理すると、三富キク又は三富きく名義に統一されたものの関係では「三富」「川島」「山崎」「三島」の四種、三富桂子名義関係では「三富」「川島」の二種、三富繁信及び三富繁太郎名義関係では「三富」の一種であり、更に三富キク及び三富桂子名義関係では、「川島サト」という同一の架空名義が共通して使用されている(別表二の6、11、12、別表三の1参照)ばかりでなく、三富キク名義関係で川島サト名義の預金の存した銀行は、第一銀行深川支店、大和銀行京橋支店、住友銀行錦糸町支店で、それに使用された印鑑は別表一の<2><4>であるのに対し、三富桂子名義関係では、川島サト名義の預金の預入先は三菱銀行桜橋支店で、使用された印鑑は別表一の<3>である。また、受取利息の預入先をみると、一部ではあるが、原告らが原告キク又は同繁信の所有であると主張する定期預金(別表二の6、別表三の2、3)の受取利息(当該定期預金の設定、振替のもとになった定期預金の受取利息を含む。)が三菱銀行、三和銀行及び第一銀行の三富繁太郎名義の普通預金に振り込まれている(別表七参照)反面、成立に争いのない乙第三〇号証の二、原本の存在と成立に争いのない乙第五〇号証及び証人田中冨士夫の証言によれば、三和銀行八丁堀支店の三富繁太郎名義普通預金から出金された資金で三富キク名義定期預金(別紙一の8)が設定されていたりしていること(別表三の4参照)が認められる。原告キクは、右受取利息が繁太郎の口座に振り込まれたのは家族間で金員の融通をし合っていたからである旨供述するが、不自然の感を免れず、たやすく首肯しがたい。
以上の事実からすると、別表二ないし四に掲記された定期預金は、同一人が管理、運用していたものであることが窺われる。
(2) 三富桂子、三富繁信名義の預金(別紙一の2ないし6)
成立に争いのない乙第四号証及び証人田中冨士夫の証言によれば、昭和四三年九月二七日、原告キクは、本件相続税につき被告署長所部職員から調査を受けた際、別紙一の2ないし6の三富桂子、三富繁信名義の普通預金及び定期預金は繁太郎が貯金し管理していたもので、原告桂子、同繁信はそのことについて何も知らない旨を調査担当者との間で作成した問答書に記載していることが認められる。原告キクは、その本人尋問において、右記載は調査担当者から強要されたもので意に反するものであると供述するが、証人田中冨士夫の証言と同原告本人尋問の結果によると、右調査の際には、前記前田公認会計士事務所の職員が終始立ち会っていたことが認められ、また、乙第四号証には、本件遺産に属しない原告桂子の個人預金(三和銀行八丁堀支店普通預金)の存在すること等も記載されていることからすると、右原告キクの供述は措信することができない。
また、右預金を個別に検討してみると、別紙一の3、5、6の各定期預金に使用された印鑑、名義及び解約、設定、振替並びに受取利息の預入先の状況が別表三の1、2、3、別表七の別表番号欄「三の1」「三の2」「三の3」のとおりであることは当事者間に争いがなく(別紙一の5、6の三富繁信名義定期預金の受取利息は、前記のとおり三富繁太郎名義普通預金に振替入金され、同3の三富桂子名義定期預金の受取利息は、次に述べる同2の同人名義普通預金に預入されている。)
別紙一の2の三富桂子名義普通預金は、前掲乙第三〇号証の二、原本の存在と成立に争いのない乙第四二号証及び証人田中冨士夫の証言によると、右預金に使用されている印鑑は別表一の<3>であること、昭和二九年当時、原告桂子は一六歳であったにもかかわらず、右預金には、昭和二九年から昭和三一年頃にかけて多くの手形による入金のあることが認められ(なお、原告キクは、その本人尋問で、右預金を原告桂子が贈与を受けたのは、甲第五号証記載のとおり昭和二九年以前であると供述している。)、別紙一の4の三富繁信名義普通預金についても、前掲乙第一号証の一、二、第二、第四号証、第三〇号証の二、成立に争いのない乙第三五号証及び証人田中冨士夫の証言によれば、右預金に使用されている印鑑は別表一の<6>であること、原告らも本件遺産に属するものとして修正申告をし本訴においてこれを争わない三富繁信名義の理研食糧工業株式会社の株式の配当金(昭和四〇年三月一六日の二万八五〇〇円、昭和四一年三月一二日の二万二五〇〇円)がそれぞれ右預金に払込まれていること、右預金から昭和四一年三月三〇日に七七万四二二一円が払い出されているが、これについて原告キクは、前記調査担当者との間で作成された問答書に「右払出しは繁太郎が行ったものである。」と記載していることが認められる。
(3) 三富キク、三富きく名義の預金(別紙一の7ないし9)
別紙一の7の三富キク名義普通預金については、前掲乙第四号証、第三〇号証の二、成立に争いのない乙第九号証、第三八号証、原本の存在と成立に争いのない乙第三七号証及び証人田中冨士夫の証言、原告桂子本人尋問の結果によれば、前記調査担当者との間で作成された問答書に、原告キクは、右預金は繁太郎が管理していたと記載していること、右預金に使用されている印鑑は別表一の<2>であること、昭和三九年三月三〇日に右預金から原告桂子のバー開設の資金に充てるため二〇〇万が払い出されているが、これについて原告キクは前記問答書にこれは繁太郎から貰ってやったものであると記載していること、昭和四一年六月一七日右預金より四〇万円が三菱銀行桜橋支店の三富繁太郎名義普通預金に振替入金されていることが認められる。
次に、別紙一の8の三富キク名義定期預金は、前掲乙第三〇号証の二、第五〇号証、証人田中冨士夫の証言によれば、別表三の4のとおり昭和三九年一二月二六日三和銀行八丁堀支店の三富繁太郎名義普通預金から六〇万が預入されて設定されたものであり、使用されている印鑑は別表一の<2>であることが認められる。
また、別紙一の9の三富きく名義普通預金については、前掲乙第四号証、第三〇号証の二によれば、原告キクは前記問答書において、右預金は生活費から貯えたもので生活費に使つていた旨記載していること、右預金に使用されている印鑑は別表一の<7>であるが、この印鑑は、別表二の7、8のとおり東海銀行京橋支店の三富キク、川島キク名義定期預金にも使用されているところ、これらの定期預金証書には同表の「別表一の印影番号」欄記載のとおりいったん別表一の<2>、<4>の印鑑が押印されていることが明らかである。
(4) 以上の事実に加え、弁論の全趣旨によれば、繁太郎の生前原告家で経済の実権を有していたのは繁太郎であると認めることなどを合わせ考慮すると、別紙一の2ないし9の各預金は原告らの名義となってはいるが、これらを実際に管理、運用、支配していたのは原告らではなく繁太郎であったと認めるのが相当である。
これに対し、原告らは、右預金及び後記本件更正処分の対象となった預金は繁太郎が自己の健康状態と特殊な家庭事情から甲第五号証記載の時期(昭和三〇年前から昭和三七年までの間)に原告らに対して贈与したものであると主張するが、右主張にそう証人鈴木覚の証言及び原告キク、同桂子の各本人尋問の結果は具体性と客観的裏づけを欠き、前掲各証拠及び事実と対比して措信するに足りず、右証人鈴木の作成した甲第五号証も同様である。もっとも、一般的には、名義は権利の帰属を推定させるものであるが、本件においては、右贈与があつたとして主張されている時期以降の預金名義と使用印鑑が前記のとおり多種多様で混然としており、原告ごとに明瞭に特定区分しうる状況ではなかったことからすれば、その後昭和三八年に至り預金名義が原告らに統一されたからといって、当該名義人たる原告に対してすでに贈与されていたものと推定することはできないというべきである。
結局、別紙一の2ないし9の預金は原告らに帰属していたものではなく、繁太郎に帰属していたものとして本件遺産を構成すると認定すべきである。
(三) 三富繁信名義の三菱銀行株式二万株(別紙一の10)
原告キクは、その本人尋問において、右株式は原告繁信が復員直後繁太郎より贈与を受け、増資のたびに原告繁信本人が増殖してきたものであると供述し、成立に争いのない甲第一二号証の一、乙第五号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第一二号証の二ないし四、第一三号証によると、原告繁信は昭和三九年分及び昭和四三年分の所得税の確定申告において右株式の配当金を自己の所得として申告していることが認められる。
しかし、他方、前掲乙第四号証、第三〇号証の二、第三五号証、成立に争いのない乙第三三、第三四号証及び証人田中冨士夫の証言によると、原告キクは前記問答書に右株式は繁太郎が管理していた旨を記載していること、昭和三九年一月八日に三菱銀行に払い込まれた一万株の増資払込金五〇万円は同銀行桜橋支店の三富繁太郎名義普通預金より支出されていること、右株式の昭和三八年一一月二九日、昭和三九年五月二九日、昭和四〇年五月二八日、同年一一月二九日の配当金が同支店の三富繁信名義普通預金(別紙一の4。この預金は前記(二)のとおり繁太郎が管理、支配していたものであると認められる。)に払い込まれていることが認められる。
そうしてみると、右株式の真の帰属関係は、その名義、前記原告キクの供述及び原告繁信がした配当金の申告にかかわらず、にわかに断定しがたいものがあり、これが原告繁信に帰属するとの主張はその証明がないといわざるをえない。
(四) 有価証券三富キク名義ワリコー六〇〇口、同ユニット五五口(別紙一の11、12)
原告らは、右有価証券は原告キクが繁太郎より生前贈与を受けた一〇万円と五万円を運用して増殖したものであると主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
(五) 三富キク名義掛金(別紙一の13)
原告らは、右掛金は原告キク自身が毎月一万三〇〇〇円宛を積み立てたものであると主張すするが、前掲乙第三〇号証の二によれば、右積立金の源泉は繁太郎の収入であったことが認められるので、名義のみによって同原告に帰属するものとすることはできない。
(六) 取扱料(別紙一の14)
前掲乙第三〇号証の二、証人田中冨士夫の証言によって真正に成立したと認められる乙第二九号証の一、二及び同証言によると、右取扱料一〇万円は、産業振興株式会社が繁太郎に支払うべき鉄屑の取扱料が本件相続開始時において未収金となっていたものであることが認められ、本件遺産を構成するものであることは明らかである。
4 以上によれば、本件修正申告の対象となった別紙一記載の財産が本件遺産を構成しないものであるとは認められないのであるから、右遺産を構成しないものであることを前提として本件修正申告の錯誤による無効をいう原告らの主張は理由がない。
四 本件更正処分の適法性について
1 本件更正処分が別紙二記載の定期預金及び未収利息(ただし、5は未収利息のみ)を本件遺産に属するものとしてなされたことは、当事者間に争いがない。
2 そこで右定期預金等の帰属について判断する。
(一) 右定期預金は本件修正申告においても申告されなかったため更正処分の対象とされたものであるが、成立に争いのない甲第三号証、前掲乙第三号証、証人田畑岩三郎、同前田幸蔵、同田中冨士夫の各証言及び原告キク本人尋問の結果(一部)によれば、本件当初申告後に本件相続税について税務当局の調査が行われ、その調査によって本件当初申告書に掲記されていない別紙一の2ないし14別紙二の1ないし13等の財産の存在することが発覚したので、調査担当者田中富士夫は、これらの財産が本件遺産に属するものと判断し、右財産について修正申告をするように原告キク及び前田公認会計士事務所に勧告したところ、前田事務所では、右判断を一応もつともと考えたものの、原告らの利益をも考慮して、右財産中の定期預金を、その発生が本件相続開始前五年未満のものとそうでないものとに分け、前者については修正申告をしたが、後者(すなわち、別紙二の定期預金)については、相続税の課税標準額から除外されたい旨の陳情書を被告署長宛に提出して修正申告に含めなかったことが認められるのであり、右別紙二の定期預金をすでに認定した別紙一の定期預金と区別してあえて修正申告をしなかったことにつき格別の実質的根拠があつたわけではない。
(二) 右定期預金の解約、設定、振替及び使用された名義、印鑑の状況は別表二のとおりであるところ、右状況を前記三3(二)で認定した事実をもとに考察すると、これら定期預金も別紙一の2ないし9の預金と区別されることなく同じようにして管理、運用されていたものであると認められる。現に、当事者間に争いのない受取利息の預入先を記載した別表七によれば、別紙二の6の定期預金の昭和三八年四月一日の受取利息(本定期預金が設定されるもとになった一七口の定期預金の解約の際の受取利息は、第一銀行深川支店の三富繁太郎名義の普通預金に振り込まれているし、別紙二の1ないし4、6、10、12の定期預金の受取利息(当該定期預金の設定のもとになった定期預金の受取利息を含む。)は、前記三3(二)において繁太郎に帰属するものと認定した三菱銀行桜橋支店の三富キク名義普通預金(別紙一の7)に振り込まれていることが明らかである。
(三) 原告らは、右定期預金についても繁太郎から原告キクが贈与を受けたものである旨主張するが、この点に関する甲第五号証、証人鈴木覚の証言、原告キク、同桂子の各本人尋問の結果を採用しえないことは、すでに説示したとおりである。
(四) 以上の諸点に前記三3(二)の認定判断を総合すれば、別紙二記載の定期預金は本件遺産を構成するものと認められ(もつとも、同5の定期預金は、すでに本件遺産に属すると認定した別紙一の8の定期預金と同一である。)、したがって、その未収利息も特段の主張立証のない限り本件遺産に属するものというべきである。
3 そうすると、本件更正処分に原告ら主張の違法はない。
五 以上のとおりであるから、本件当初申告及び本件修正申告の無効並びに本件更正処分の違法を理由とする原告キク、同桂子の本訴請求は理由がない。
(結論)
よって、原告繁信の訴えを却下し、原告キク、同桂子の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 佐藤繁 裁判官 川崎和夫 裁判官 菊池洋一)
別紙一
<省略>
預金
<省略>
<省略>
別紙二
<省略>
番号5の定期預金60万円は別紙一の8のとおり修正申告済みであるので、その未収利息のみを加算した。
別表一 印影目録及び右印影を収集した預金名
<省略>
別表二 定期預金の動き(更正分)
1 三菱銀行桜橋支店三富きく名義定期預金第一、三〇一号
<省略>
2 三菱銀行桜橋支店三富きく名義定期預金第一、二九九号
<省略>
3 三菱銀行桜橋支店三富キク名義定期預金第七、四一一号
<省略>
(注) 昭和四一年三月三〇日三菱銀行桜橋支店の三富キク名義普通預金より九〇〇、〇〇〇円増額預入
4 三菱銀行桜橋支店三富キク名義定期預金第七、三三五号
<省略>
5 三和銀行八丁堀支店三富キク名義定期預金第四〇〇二九一号は、未収利息二五、一四二円のみ更正したものにつき省略(別表三の4参照)
6 第一銀行深川支店三富キク名義定期預金第六五四、七〇四号
<省略>
7 東海銀行京橋支店三富キク名義定期預金第二四、五九八号
<省略>
(注) 右印影番号欄において《2》<7><と>なっているのは、各取引銀行に保管されている定期預金証書の裏面に当初押印された<2>の印影を抹消して<7>の印鑑を押印したことを示す(以下同じ)。
8 東海銀行京橋支店三富キク名義定期預金第二六、〇六一号
<省略>
9 東海銀行京橋支店三富キク名義定期預金第二六、六六〇号
<省略>
10 住友銀行浅草支店三富キク名義定期預金第一、五〇八号
<省略>
11 大和銀行京橋支店三富キク名義定期預金第一二、六二四号
<省略>
(注) 右印影番号欄において<2><4>とあるのは、<2>及び<4>の二つの印鑑が押印されていることを示す。
12 住友銀行錦糸町支店三富キク名義定期預金第四、八八五号
<省略>
13 住友銀行錦糸町支店三富キク名義定期預金第四、八一一号
<省略>
別表三 定期預金の動き(修正申告分)
1 三菱銀行桜橋支店三富桂子名義定期預金第七、四五二号
<省略>
(注) 昭和三八年四月一日三菱銀行桜橋支店の三富桂子名義普通預金より四〇〇、〇〇〇円増額預入
昭和四一年四月一日右普通領金より七〇一、〇〇〇円および本定期預金の受取利息より九九、〇〇〇円合計八〇〇、〇〇〇円増額預入
2 三菱銀行桜橋支店三富繁信名義定期預金第七、四一二号
<省略>
(注) 昭和四一年三月三〇日三菱銀行桜橋支店三富繁信名義普通預金より七七四、二二一円および本定期預金の受取利息より一七五、七七九円 合計九五〇、〇〇〇円増額預入
3 三和銀行八丁堀支店三富繁信名義定期預金第四〇一、四四〇号
<省略>
4 三和銀行八丁堀支店三富キク名義定期預金第四〇四、八八〇号
<省略>
(注) 昭和三九年一二月二六日三和銀行八丁堀支店三富繁太郎名義普通預金より六〇〇、〇〇〇円預入
別表四 定期預金の動き(当初申告分)
1 三和銀行八丁堀支店三富繁太郎名義定期預金第四〇二、一七九号
<省略>
(注) 昭和三八年五月二二日三和銀行八丁堀支店三富繁太郎名義普通預金より一、〇〇〇、〇〇〇円および現金一、〇〇〇、〇〇〇円 合計二、〇〇〇、〇〇〇円増額預入
2 三和銀行八丁堀支店三富繁太郎名義定期預金第四〇二、一八一号
<省略>
(注) 昭和四一年三月二五日三和銀行八丁堀支店三富繁太郎名義普通預金より一、五〇〇、〇〇〇円預人
3 三菱銀行桜橋支店三富繁太郎名義定期預金第八、〇一三号
<省略>
(注) 昭和三八年七月一五日三菱銀行桜橋支店三富繁太郎名義普通預金より三、〇〇〇、〇〇〇円預入
4 三菱銀行桜橋支店三富繁太郎名義定期預金第七、三六五号
<省略>
5 三菱銀行桜橋支店三富繁太郎名義定期預金第七、七六四号
<省略>
(注) 昭和四〇年六月五日三菱銀行桜橋支店三富繁太郎名義普通預金より二、〇〇〇、〇〇〇円預入
6 三菱銀行桜橋支店三富繁太郎名義定期預金第七、六八一号
<省略>
(注) 昭和四一年五月二三日三菱銀行桜橋支店三富繁太郎名義当座預金より一、〇〇〇、〇〇〇円預入
7 東海銀行京橋支店三富繁太郎名義定期預金第一四、一七二号
<省略>
(注) 昭和三八年九月二三日東海銀行京橋支店三富繁太郎名義普通預金より三、〇〇〇、〇〇〇円預入
8 東海銀行京橋支店三富繁太郎名義定期預金第二八、一二三号
<省略>
(注) 昭和四〇年八月二日東海銀行京橋支店三富繁太郎名義普通預金より一、〇〇〇、〇〇〇円預入
昭和四一年八月二日右普通預金より一、〇〇〇、〇〇〇円増額預入
別表五 別表一の印鑑により当初預入された別表二ないし四の預金名
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>
別表六 原告らが相続財産として申告(修正申告を含む)した普通預金名
<省略>
別表七 別表二ないし四に記載した定期預金の受取利息の預入先(定期預金名は別表の番号で示す。)
<省略>
<省略>
(注) 別表番号欄二の3の昭和三八年三月三〇日欄の受取利息は、二四万七五五〇円であるが、キク名義の普通預金に入金されたのは、同金額からキク名義の定期預金増額に充てられた九万九〇〇〇円を差引いた一四万八五五〇円であり、また、別表番号欄三の2の昭和三八年三月三〇日欄の受取利息は一七万三三〇〇円であるが、繁太郎名義の普通預金に入金された金額は、同金額から繁信名義の定期預金増額に充てられた四万九〇〇〇円を差引いた一二万四三〇〇円である。
別表八 昭和三八年三月一日現在の定期預金の口数及び金額
<省略>